2014年1月17日金曜日

ドリーム・ベイビー・ドリーム  銀杏BOYZ新作「光のなかに立っていてね」「BEACH」を解読する試み

淫夢(WET DREAM!!)、正夢etc....「夢」には様々なカタチがあって
その中でも特におもしろいのは

「明晰夢」


というドリーム状態ッ。

明晰夢Wiki


映画「インセプション」のように






その夢のカタチを手に入れられたら
僕等はどこへも行ける・なんにでもなれる・君に近づける・・・・・



銀杏BOYZ、9年ぶり新作 「光のなかに立っていてね」「BEACH」は
ROCK史上類を見ない、サイケデリックな「夢」をテーマとした傑作アルバムである。



YOU&I VS THE WORLD

言うまでもなくずーーーっと銀杏BOYZの音楽は
「仮想敵」としての世界に対峙するためのアンセムだった


その戦いは第三次世界大戦と名付けられ





キミとボクを隔てようとするDOORの向こう側の世界は
容赦なくその醜悪な本質を暴かれていった






銀杏BOYZのギターサウンドとはヘナチョコな兵士が唯一手にした暴発覚悟の武器であり
壮絶なLIVEは文字通りその戦場を観客と共に再現する装置だった





でも世界は僕等の「ホントウの敵」だったのか??




ライブリミックスアルバムと銘打たれた「BEACH」
BANDを脱退した安孫子氏によって
ライブ音源とレイヤーされた新たなサウンドがミックス&プログラミングされた
このアルバムは明らかに銀杏BOYZの墓標(エピタフ)である。






生々しい戦いの「記憶」がまるで墓石のように
まるで「波」のようなノイズとシークエンスで塗り固められる・・・
もしあの銀杏BOYZのライブそのままをパッケージングするなら
実はこうした処理は必要なかった。
でもその軌跡はすでに「過去」のものである事


波にさらわれてしまっても




まだ僕等の頭の中に残る記憶をカタチにする
その遺志によって貫かれたアルバムが「BEACH」である




そしてもう一度


でも世界は僕等の「ホントウの敵」だったのか??



「BEACH」によって銀杏BOYZは自らの戦いを葬り去ってしまった





ノイズと打ち込みの導入という新作の一報を知った時
実は僕はちょっといやーーーな予感がしていた。
3.11以降、「仮想敵としての世界」という対立項は
表現の核としてあまり意味をなさなくなったと思っている僕にとっては
ギターをノイズに、あのグルーブを打ち込みに
そんな風に武器だけを新しくしてもあんま意味ないんじゃないか??
と思っていたりしたのデッス。


BANDの皆様、そして峯田様ほんとーーーーーーーーーーーにゴメンナサイ!!!!



遂に聴くことができた「光のなかに立っていてね」は
そんな側だけをとっかえたアルバムじゃなかった!!


峯田氏が駆使したというカオシレーター!!からシューゲイズばりにプロセスされたギターサウンド
そしてゲームセンターやパチンコ屋に渦巻くような狂騒的な電子音
「光のなかに立っていてね」の音の実相は
妄想の中で世界と差し違えるための「武器」として鳴っていたギターとカオスとは見事なほど異なっている。

ウォールオブサウンド!! 「光のなかに立っていてね」で鳴っている音は
全て世界をシャットアウトする「壁」として機能しているのだ


その中に潜むものをこぼれ落とさないように
その中で生きるものをセカイによって邪魔されないように


そしてその新しい「音の壁」によって守られているもの
それは夢と現実の境が消え去った明晰夢のような場所
妄想から幻想、夢へと深化したキミとボクの姿なのだ



冒頭に書いた明晰夢。それを見るためにはかなりの訓練が必要になると言われていて
イコール「夢の中で生きる」そんな状態は一朝一夕には身につかないだろう。
僕はずーーーーーーーーっとななななななんで銀杏は新しいアルバムを出さないんだよぉぉぉぉぉ!!!
と思っていた人間の一人ですが「光のなかに立っていてね」を聴いて
何故9年もの時間がかかったのかすぐにわかった。


夢の中で生きる事


「そのための音」を鳴らすためのディシプリン、訓練の期間としてBANDは9年間を必要としたのであり
そしてその結果として「武器」だったサウンドは「壁」へと
そして「僕と君」と「世界」を「区別」するためのコトバは「ボクトアナタ」をそして「生と死」を包み込む言葉へと変化した







多くのサイケデリックバンドやシューゲイザーバンドが試みた
そんな臨界点へと銀杏BOYZは「光のなかに立っていてね」で辿り着いてしまった!!!


夢の中へと、異界へと堕ちていく映画として僕が最も好きな作品は「陽炎座」だけど




「愛の裂けめ」における峯田氏は夢の中で恋と愛の天国・地獄に落ちていく松田優作演じる松崎のよう!!


そしてSUICIDEの「DREAM BABY DREAM」のようなアルバムのラスト「僕たちは世界を変えることができない」
と共にこのゴイステ・銀杏BOYZ史上最も「ロマンティック」なアルバムは幕を閉じる






先日放送されたダイノジ大谷ノブ彦氏のオールナイトニッポンで突如披露された新曲
「夕闇を殺せ」はすでに何曲もできあがっているという新曲群をも予感させる
次がラストとなる銀杏BOYZ三部作の在り様を予感させるまったく次元の違う曲だった!



夢を自覚する事、フィクションと現実の境界が曖昧になった世界を体験する事は
また新しい現実へと向かうためにどうしても必要な通過儀礼で

そして光のなかに立っている君に再び出会うために僕等はまた夢を見るのだ